不動産の売却時、前提として相続登記は必要か?
故人の遺産に「不動産」が含まれることは大変多いです。
自宅等の不動産については「引き続き家族が居住する」というケースも多いですが、使用する予定のない不動産については「売却する」という選択肢も考えられます。
故人名義の不動産を売却した場合
「故人→買主」に直接名義変更をできるのでしょうか?
それとも一旦相続登記が必要なのでしょうか?
このページでは「相続不動産の売却時、相続登記が必要か」について解説いたします。
相続不動産を売却する方は少なくない
司法書士として遺産相続に関わるなかで「相続不動産を売却する」という方は一定数いらっしゃいます。
・誰も使わない実家の方の不動産
・故人名義の投資用不動産
こういった事情があるときには、「不動産を売却し、その代金を相続人で分配する」という相続方法がとられます。
「不動産を売却→代金を分ける」という遺産分割方法:換価分割
遺産分割の方法として「換価分割」という種類の方法があります。
1.不動産を売却
2.その代金を相続人で分ける
このような遺産相続方法のことを「換価分割」といいます。
いきなり買主さんに名義変更できるのか?
不動産は「不動産登記簿」という法務局にある帳簿によって管理されています。登記簿には「所有者の氏名・住所」といった情報が記録されています。
相続不動産の売却によって、登記名義人は最終的には買主本人に変更されるのですが、故人→買主へと直接名義変更はできるのでしょうか?
まず相続登記が必要。買主へ移転はその後!
結論からいうと「故人→買主」と直接登記名義人を変更することはできません。
手続きの流れとして
1.相続人に名義変更(相続登記)
2.相続人→買主へと名義変更登記
という順序になります。
まず相続登記が必要となってくる理由
不動産売却を決められた(買主と合意の時期)はいつでしょうか?
【売買契約成立の日が、故人の相続発生後だった場合】
相続の発生により
・故人→相続人
へと権利承継が発生しています。その後、相続人が買主との合意に至るわけです。
(「故人→相続人→買主」という権利変動が起こっている。)
その内容通りに登記申請をする必要があるため、
1.相続登記
2.売却による買主への所有権移転登記
となるのです。
売却担当者を決めて、一時的にその人単独名義にすることが多い
ここまでの説明で「相続不動産を売却するときは、いったん相続登記を入れる」ということをご理解いただけたと思います。
ここからは、「相続登記をする際の便利な取扱い」について解説いたします。
相続人全員名義にしなくてもよい!
「相続人の人数が多い、相続人同士が近所に住んでいない」といった事情は珍しくありません。
相続人全員の名義に相続登記してしまうと、「全員で動く必要がある・なかなか予定が合わない等」色々と不都合が生じると思います。
そのため、「不動産売却担当の相続人」を決定し、一時的にその人の単独名義にしておくことを推奨しています。
あくまでも一時的な措置として
単独名義に相続登記するのは「あくまでも一時的な措置」です。登記簿上は「単独所有者」と記録されますが、実際にその人が不動産を単独相続するわけではありません。
そのため、遺産分割協議書の中に下記のような文言を盛り込みます。
「不動産売却はAが担当し、被相続人名義の下記不動産は一時的にAの単独名義とする。」
この記載は必須ですので、書き忘れのないようにしてください。
まとめ
ここまで「相続不動産売却の際、前提となる相続登記」について解説いたしました。
いったん相続人名義へ相続登記が必要ということを覚えていただき、今後の手続きにお役立てください。
・故人→買主に直接移転はできない
・いったん相続人に名義変更(相続登記)をする
・相続人のうち「売却担当者」を決めるとよい
・一時的にその人の単独名義にすることを推奨