同時存在の原則とは?(遺産相続)
遺産相続の発生により、故人の一切の権利義務が相続人に承継されます。
では、相続人には誰がなるのでしょうか?
相続人確定の際、「同時存在の原則」という判断基準があります。
このページでは「遺産相続における同時存在の原則」について解説いたします。
同時存在の原則とは?
同時存在の原則とは、
・故人の死亡時点において
・生存している人物のみ
が相続人の資格を有するという規定です。
簡単に説明すると
・相続発生時に生存している人=相続人となる資格あり
・相続発生時に死亡している人=相続人となれない
ということになります。
そもそも生きていないと権利義務の主体となれない
相続発生により、故人の一切の権利義務が承継されます。
要は、故人の権利義務が相続人に移転するということです。
なお、権利義務の主体なれるのは原則「生きている人のみ」です。
亡くなっている方は、権利義務の主体(相続人)となれないのです。
ここまで、少し堅苦しい説明になってしまいました。
以下、具体例をもとに同時存在の原則について解説いたします。
具体例:同時存在の原則
基本事例:故人Aさん(2017年死亡)
【家族構成】
・亡配偶者B(2015年死亡)
・子供C(存命)
という事例を想定してください。
この場合の相続人は誰になるのでしょうか?
答えは「子供Cさん」のみです。
故人の死亡時点に生存していない人物は相続人となることはできません。
これが同時存在の原則の規定です。
これに照らして考えてみましょう。
Aさんの死亡時にBさんは生存していない
今回の相続対象者であるAさんは2017年に亡くなりました。
その配偶者であるBさんは2015年に死亡しています。
時系列としては
Bさん死亡
↓
Aさん死亡
という順番です。
すなわち、Aさんの死亡時点において配偶者であるBさんは存命ではありません。
したがって、本ケースでは同時存在の原則により配偶者Bは相続権を取得しないのです。
もうひとつ具体例を説明いたします。
基本事例:故人Aさん(2015年死亡)
【家族構成】
・亡配偶者B(2016年死亡)
・子供C(存命)
という事例を想定してください。
現時点においては、既にBさんも亡くなっています。
この場合、Aさんの遺産相続においてBさんは相続人となるのでしょうか?
答えは「YES」です。
え??なんで??
そのように感じた方もいらっしゃると思います。
ここでもう一度同時存在の原則について復習します。
同時存在の原則とは、
・故人の死亡時点において
・生存している人物のみ
が相続人の資格を有するという規定です。
Aさんの死亡時にBさんは生きている
今回の相続対象者であるAさんは2015年に亡くなりました。
その配偶者であるBさんは2016年に死亡しています。
時系列としては
Aさん死亡
↓
Bさん死亡
という順番です。
Aさんの死亡時点(2015年)にBさんは存命です。
その結果、Bさんは相続権を取得しているのです。
本ケースでは、相続権を取得したBさんも既に亡くなっています。
ですが、あくまでも基準は「相続対象者の死亡時点で存命かどうか」になります。
同時存在の原則の例外など
ここまで同時存在の原則の概要について説明いたしました。
最後に
・同時死亡の場合の取扱い
・同時存在の原則の例外
について解説いたします。
同時死亡の場合の取扱い
同時に死亡した場合の取扱いについて説明いたします。
【夫A・妻Bが飛行機事故により同時死亡】
このようなケースを想定してください。
この場合は、互いに相続権を取得することはありません。(相続人とならない)
「相続発生時に生きている人だけが相続人になる」というのが同時存在の原則です。
・同時に死亡=死亡時点では2人とも亡くなっている
ということですので、互いに相続権を取得しないという結論になります。
同時存在の原則の例外規定:胎児
最後に同時存在の原則の例外規定について紹介いたします。
このページで先ほど、
・生きている人でないと相続人になれない
・生きている人でないと権利義務の主体となれない
という説明をいたしました。
これに関する例外が「胎児」の取扱いです。
胎児は、まだこの世に生をうけていません。
そのため、法律上の人とはみなされず同時存在の原則に反します。
しかし、胎児については例外的に「生まれたものとみなす」という規定があるのです。
すなわち、胎児については生まれる前(法律上の人となる前)であっても、相続人となる資格を有するという取扱いになっています。
まとめ
ここまで「相続における同時存在の原則」について解説いたしました。
このページの内容を相続人確定の際にお役立てください。
・相続発生時に生存している人=相続人となる資格あり
・相続発生時に死亡している人=相続人となれない
・これを同時存在の原則という