相続人不存在の場合の権利取得者は誰?
遺産相続が発生した場合は、財産は相続人に承継されます。
ただ、稀に故人に法定相続人が存在しないケースがあります。
この場合、遺産は誰が取得するのでしょうか?
国のものとなってしまうのでしょうか?
このページでは「相続人不存在における権利取得者」について解説いたします。
遺産相続と法定相続人
相続発生に伴い、権利を取得する人物のことを「相続人」と呼びます。
相続人は法律の規定により定められています。
「法律により定められた相続人」ということで、これを「法定相続人」といいます。
法定相続人に該当する人物とは?
では、具体的に法定相続人は誰が該当するのでしょうか?
法律上定められている相続人は、
・配偶者
・子(孫)
・親
・兄弟姉妹(甥・姪)
といったところです。
故人にこれらに該当する人物がいる場合、その人物が法定相続人となり遺産を承継します。
相続人不存在というケースもありうる
ただ、遺産相続の事例は様々です。
場合によっては、相続人が誰も存在しない「相続人不存在」というケースも存在するのです。
相続人不存在の場合、故人の遺産はどのように扱われるのでしょうか?
相続人不存在の場合の権利取得者
相続人不存在の事例では、「遺言書の有無」によってその後の取り扱いが大きく異なります。
以下、
・遺言書あり
・遺言書なし
とケース別に解説いたします。
相続人不存在での権利取得者(遺言書あり)
相続人不存在のケースでは手続きが大変複雑・面倒なものになります。
それを見越して、生前に故人が遺言書を書いていることがあります。
遺言書がある場合は、財産帰属先の結論は簡単です。
「受遺者」が故人の遺産を取得します。
受遺者が権利取得(相続人でなくても)
「私の全財産をAに遺贈する」
→このような遺言書がある場合、全遺産はAさんのものとなります。
遺言により財産を取得すると指定された人物を受遺者といいます。
これは、親族でなくても問題ありません。
「遺言書がある場合→受遺者が遺産取得」と覚えておいてください。
さて、問題は遺言書がない場合です。
この場合は、権利取得者の判断が難しくなります。
相続人不存在での権利取得者(遺言書なし)
「相続人不存在・遺言書なし」の場合には、
1.特別縁故者への財産分与
2.共有者の権利取得
3.最終的に国庫への帰属
と3つの可能性があります。
以下、それぞれについて解説いたします。
1.特別縁故者への財産分与
相続人不存在の事例では、その名のとおり誰も相続人が存在しません。
このような場合には「特別縁故者」の存在を考える必要があります。
特別縁故者とは、
・法定相続人には該当しない
・しかし、故人に特別の寄与、貢献をした人物
のことを指します。
特別縁故者の具体例
特別縁故者に該当する人物の具体例として「内縁(事実婚)の配偶者」が挙げられます。
内縁の配偶者は、あくまで法律上は「他人」です。(親族ではない)
内縁であるため、法律上の配偶者の地位を持たないのです。
相続人不存在→特別縁故者への財産分与の可能性あり
相続人がいる場合、特別縁故者が財産を取得することは困難です。
(法定相続人が権利を取得するため)
ただし、相続人不存在の事例では特別縁故者が財産を取得できる可能性があります。
家庭裁判所から財産分与の審判がされることがあるのです。
2.共有者の権利取得
次に「相続人不存在・特別縁故者も不存在」というケースについて説明いたします。
この場合には、財産の共有者が遺産を取得することになります。
以下、具体例をもとに解説いたします。
具体例:共有者の財産取得
【基本事例】
・土地を「Aさん・Bさん」で2分の1ずつ共有している。
・Aさんが死亡
・Aさんには相続人が誰もいない
・特別縁故者に該当する人物もいない
という事例を想定してください。
この場合、土地のAさん持分(2分の1)は共有者であるBさんが取得します。
「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。」という民法255条の規定が適用されるのです。
3.最終的に国庫への帰属
上記で「特別縁故者・共有者」に遺産取得の可能性があると説明いたしました。
では、
・特別縁故者もいない
・遺産が共有財産ではない場合(故人が遺産を単独所有している)
場合はどうなるのでしょうか?
この場合は、故人の遺産は最終的には国庫に帰属します。
要するに、国のものになってしまうということです。
そのため、相続人不存在の方は生前に遺言書を書くことを推奨しているのです。
(財産を渡したい人・団体に贈与できるので)
まとめ
ここまで「相続人不存在の場合の遺産取得者」について解説しました。
このページの内容を参考にしていただき、今後の遺産相続にお役立てください。
・相続人が誰も存在しないケースあり(相続人不存在)
・遺言書あり→受遺者が権利取得する
・遺言書なし→特別縁故者、共有者が財産取得の可能性あり
・最終的には国に帰属してしまう