限定承認とは?
相続が発生した場合、相続人は、
・単純承認
・限定承認
・相続放棄
のどれかを選択することができます。
普通に相続することを単純承認というのですが、その他に相続放棄・限定承認という方法がございます。
限定承認というのは、あまり聞きなれない言葉であると思います。
限定承認とは、どのような制度なのでしょうか?
どういったケースで限定承認が有効となるのでしょうか?
このページでは限定承認について解説いたします。
前提知識:単純承認と相続放棄
遺産相続の発生時には、
・単純承認
・相続放棄
・限定承認
と大きく分けて3つの中から自由に選択することが可能です。
まず前提知識として、単純承認と相続放棄について簡単に説明いたします。
・単純承認=全財産・全負債を相続すること
・相続放棄=一切の相続財産を放棄する(相続しない)こと
を意味します。
限定承認とは?
限定承認とは、
・相続によって得た財産の範囲内で
・被相続人の借金を支払う
という条件付きの相続の形態です。
上記の表現では少しわかりづらいと思います。
以下、簡単な具体例をもとに説明いたします。
具体例:限定承認(負債の方が大きい)
【基本事例】
故人の借金:100万円
故人の財産:50万円
というケースを想定してください。
限定承認とは、承継する財産を限度に負債を相続するという限度付の相続です。
・負債100万円
・財産50万円
という場合、相続人が50万円の範囲で相続する(=資産を超えて負債を支払う必要が無い)というのが限定承認です。
負債が多い場合=手元にお金は残らない
被相続人から承継する財産を限度に負債を相続するという限度付の相続が限定承認となります。
上記例のとおり、「財産より借金の方が多い場合」限定承認しても手元には財産は残りません。
(全て債務の支払いに充てられる)
しかし、限定承認により借金を承継する額も限定的となります。
(承継する資産額の範囲内でしか借金を承継しない)
結果、相続人の生活が破たんすることを避けることが出来ます。
具体例:限定承認(財産の方が大きい)
先ほどの例とは反対に、
・負債50万円
・財産100万円
というケースを想定してください。
この場合は、限定承認をすれば差額の50万円を相続することができます。
財産の方が多い=手元に差額が残る
限定承認とは、
・相続によって得た財産の範囲内で
・被相続人の借金を支払う
という条件付きの相続の形態です。
故人の遺産のうち「借金より財産」の方が多い場合には、差額分が相続人の手元に残ります。
このケースでは、50万円が手元に残ります。
限定承認が利用される場面
ここまで、限定承認制度の概要について説明してきました。
それでは、どういった場面で限定承認がされるのでしょうか?
どういった事例で限定承認が有効とされるのでしょうか?
利用例:故人の財産債務が不明のとき
限定承認は、故人の財産債務の詳細が不明な場合によく利用されます。
限定承認をすれば、大きな金額の借金があったとしてもプラスの財産を限度に借金を相続するにとどまります。
・財産の方が大きかった場合→借金との差額を取得できる
・借金の方が大きかった場合→借金の承継は限定的
ですので、相続人の生活が破綻してしまうことを回避する効果が限定承認にはあります。
限定承認は3ヶ月以内に申述が必要
なお、限定承認には期間制限があります。
3か月以内に家庭裁判所に限定承認をする旨の申述が必要となります。
(相続放棄と同じように3か月の熟慮期間がある。)
なお、この期間内に限定承認をしないと単純承認したとみなされます。
結果として、借金全額を相続してしまうことになるため要注意です。
また、限定承認は撤回ができません。
そのため、慎重に判断する必要があります。
相続人全員が揃って限定承認することが必要
また、限定承認は相続人全員が足並みを揃える必要があります。
・相続人のうちの一人だけ限定承認
・相続人Aは限定承認、相続人Bは単純承認
ということはできません。
限定承認は相続放棄と似ておりますが、相続人全員が足並みを揃えないといけない事情などがあります。
そのため、限定承認はあまり多く利用はされていないのが現状です。
まとめ
ここまで「限定承認の概要」について解説いたしました。
このページの内容を参考に、今後の遺産相続にお役立てください。
・限定承認という方法がある
・限定承認=承継する財産を限度に負債を相続するという限度付の相続
・資産と債務どちらが多いか不明のときは限定承認が有効
・限定承認はあまり利用されていない
(単純承認・相続放棄が多い)