遺言書の押印は実印以外でも有効?
故人が生前に遺言書を残している場合があります。
自筆証書遺言(手書きの遺言)の場合には、「本人の押印」が遺言書の必須要件です。
以前、相続人の方から
「押印が実印でなくてもこれは遺言書となるのか?」
という相談を受けました。
実印でないと遺言書とならないのでしょうか?
押印する印鑑に決まりはあるのでしょうか?
このページでは「遺言書の押印は実印以外でもOKか」について解説いたします。
自筆証書遺言の成立要件
本人が手書きで書いた遺言書のことを「自筆証書遺言」といいます。
遺言書は、本人の最後の意思を表示するものです。
遺言書は「単なるメモ書き」ではなく、法律文書として扱われます。
したがって、相続人は原則として遺言書どおりに遺産相続を進める必要があるのです。
本人の押印は必須要件
遺言書は法律文書であるために、様式が細かく決まっています。
その様式に沿って作成されたものだけが「遺言書」となります。
反対に、形式違反の文書については、残念ながら「遺言書」とは認められません。
遺言書作成の必須要件に「本人の押印」があります。
押印がない場合は遺言書とはなりません。(単なるメモ書き)
では、押印する印鑑に対する規定はあるのでしょうか?
実印以外の押印では遺言書は無効になるのでしょうか?
結論:遺言書への押印は実印でなくても有効
さて、このページの本題です。
遺言書への押印は、実印である必要はありません。
(もちろん実印で押印しても構いません。)
実印以外の押印でも遺言書の適格がありますので、遺言書は大切に保管してください。
認印でもOK!
遺言書における押印の種別は問いません。
そのため、
・実印
・認印
どちらでもOKです。
故人の残した遺言書が「認印の押印である場合」でも、その文書は遺言書としての適性を備えているということになります。
シャチハタは推奨しない!
反対に「シャチハタ」はあまりお勧めいたしません。
シャチハタの場合でも、一応遺言書としては有効に成立します。
ただし、シャチハタ等の安価な印鑑では「本当に本人が作成したのか」という問題が生じます。
そのため、シャチハタで遺言書の押印をするのは極力避けた方がよいでしょう。
そもそも実印かどうか確認するのが難しい
そもそも、遺言書作成者の死亡後は「押印が実印であるかどうか」の判断ができません。
家族の方からすれば「実印・認印」の判断はつくかもしれません。
しかし、それを公的に第三者に対して証明することができないのです。
以下、印鑑制度の概要を簡単に説明いたします。
死亡により印鑑登録が抹消される
故人が死亡すると、それにより本人の「印鑑登録」が抹消されます。
・死亡通知→「住民登録・印鑑登録の抹消」
となるのです。
死後は本人の印鑑証明書も取れない
先の説明のとおり、死後は印鑑登録が抹消されます。
それにより「印鑑証明書」も取得できなくなります。
(そもそも印鑑登録が無くなっているため)
印鑑証明書には
・登録者の住所氏名
・印影
が記録されています。
印鑑証明書なし=実印かどうかチェック不可
押印が実印かどうか確認する場合は、
・文書に押印された印影
・印鑑証明書の印影
を見比べて判断をします。(印鑑照合)
要するに「実印かどうかチェック」するためには印鑑証明書が必須なのです。
死後は、印鑑証明書が取得できなくなる結果として「押印が実印であるかどうかの証明が不可能」となるのです。
そのため、遺言書は実印以外の押印でもOKとされているのです。
まとめ
ここまで「遺言書にある本人の押印は実印でなくても良いか」について解説いたしました。
実印以外でも遺言書は問題ないということを覚えていただき、今後の遺産相続にお役立てください。
・遺言書は押印が必須要件
・故人の遺言書への押印は実印でなくてOK
・そもそも死亡により印鑑証明書が取れない
・実印かどうかの証明が不可=認印でもOKとなっている