遺言執行者の選任申立て方法
故人が生前に遺言書を書いていた場合、事例によっては遺言執行者の選任をしたほうが良いケースがあります。
遺言執行者の指定は主に
1.遺言書の中で指名する
2.家庭裁判所に選任申立てをする
の2つがケースとして多いです。
遺言書の中で「遺言執行者を○○とする」という記載があれば、その人が遺言執行者になります(上記パターン1)。
ですが、特に指定していない場合には、家庭裁判所に遺言執行者の選任申立てが必要となります(上記パターン2)。
このページでは「遺言執行者の選任申立て方法(家庭裁判所)」について解説いたします。
遺言執行者選任申立ての前に、自筆証書遺言の検認が必要です
家庭裁判所へ遺言執行者選任申立てをする前に、必要な手続きがあります。それは「遺言書の検認」です。
遺言書の検認とは、「遺言書を開封し当事者に内容を知らせる・検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止する」手続きです。
(ざっくり説明すると「家庭裁判所で遺言書のチェックを受ける」というふうにお考えください。)
お手元にある遺言書は「手書き」の遺言書ですか?
手書きの遺言書のことを自筆証書遺言といいます。
もしお手元にある遺言書が「自筆証書遺言」であれば、遺言執行者選任申立の前に遺言書の検認を済ませてください。
公正証書遺言の場合は検認不要!
遺言書検認が必要なのは「自筆証書遺言だけ」です。
公正証書遺言のときには、検認は必要ありません。
ですので、すぐに遺言執行者選任に進んでいただいて構いません。
遺言執行者選任申し立ての流れについて説明します
それでは、実際の遺言執行者選任の手続きの流れを説明いたします。
遺言執行者選任申立ては下記のような順序で進行します。
1.戸籍謄本等の書類集め
↓
2.遺言書検認(手書き遺言書のみ)
↓
3.遺言執行者の選任申し立て
という順番です。
遺言執行者選任の申立てを出来る人とは?
利害関係人(相続人、遺言者の債権者、遺贈を受けた者など)
申立て先の家庭裁判所は?
遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所が申立て先です。
遺言執行者選任申立ての必要書類
必要書類は裁判所のホームページに掲載されています。
具体的には
・遺言者の死亡の記載のある戸籍謄本
・遺言執行者候補者の住民票
・遺言書写し又は遺言書の検認調書謄本の写し
・関係を証する資料(親族の場合、戸籍謄本など)
となります。これらの書類について事前に準備が必要です。
「検認→遺言執行者選任申立て」を連続で行うときは特例あり!
上記で説明したとおり遺言執行者選任申立ての際には、
・戸籍謄本
・検認済み遺言書
が提出書類となります。
しかし、上記の「戸籍謄本・検認済み遺言書」については、検認後5年以内であれば提出不要という取扱いになっています。
遺言書検認の際に戸籍謄本等一式を提出します。検認から5年間は裁判所にてデータが保存されているので添付省略が認められているのです。
その結果、「遺言書検認→遺言執行者選任申立て」と連続で進めるときには、提出書類を大幅に少なくすることが可能です。
申立てにかかる実費について
印紙代は800円です。
このほかに予納郵券といって「切手」の提出が必要になります。
切手の金額は各地域に応じて異なりますので、管轄の家庭裁判所へ直接お問い合わせください。
申立ての段階で、遺言執行者の候補者を提示しましょう
面識のない弁護士等が遺言執行者に選任されるわけではありません。
申立ての段階でこちらから「遺言執行者の候補者」を提示しましょう。
「候補者が欠格事由に該当する」などの事情がないかぎり、そのまま遺言執行者に就任いたします。
【書き方の例】
遺言執行者として司法書士である次の者を選任することを希望します。
住所 東京都○○市○○町○丁目○番○号
連絡先 東京都豊島区○町○丁目○番○号 ○○司法書士事務所
氏名 A(昭和○年○月○日生 )
≪欠格事由≫
未成年者・破産者は欠格事由になりますので、遺言執行者に就任することはできません。
遺言執行者の選任審判書
選任申立ての後、書類不備など問題なければ無事に遺言執行者が選任されます。
選任後には家庭裁判所から「選任審判書」が交付されます。
選任審判書は遺言執行者の身分を証明する大変重要な書類です。大切に保管してください。
まとめ
ここまで「遺言執行者選任申立ての方法」について解説してきました。
遺言執行者選任申立のイメージを掴んでいただき、今後の遺産相続手続のお役にたてていただければ幸いです。