古い遺言書(内容が重複しない部分)の取扱いは?
故人が生前に遺言書を書いていることがあります。
なお、遺言書は1通のみとは限りません。
複数の遺言書が発見されることもあります。
古い遺言書の取扱いはどうなるのでしょうか?
このページでは「古い遺言書(内容が重複しない部分)の取扱い」について解説いたします。
遺言書は日付の新しいものが適用される
遺言書は故人の最後の意思を表すものです。
そのため、遺言書が複数ある場合には「日付が新しいもの」が適用対象となります。
以下、簡単な具体例をもとに解説いたします。
具体例:遺言書が複数ある場合
【基本事例】
1.甲不動産をBに遺贈する(2010年作成)
2.甲不動産をCに遺贈する(2018年作成)
という2つの遺言書がある場合を想定してください。
日付の新しい遺言書が適用される
この場合、遺産相続において適用されるのは「2018年作成の遺言書」となります。
・1の遺言書:2010年作成
・2の遺言書:2018年作成
故人の最終意思に近いのは「日付が新しい方」です。
したがって、甲不動産はCさんが遺贈により取得します。
Bさんは遺贈により不動産を取得しない
Bさんは甲不動産を取得することはありません。
2つ目の遺言書で「Cに遺贈する」と書かれています。
そのことで「Bに遺贈する」という意思を撤回したものと扱うからです。
内容が重複する場合:最新の遺言書が適用される
上記例で説明したとおり、複数の遺言書がある場合は「最新のもの」が適用対象となります。
ただし、これは「内容が重複する部分のみ」です。
(内容重複がある箇所→最新日付の遺言書が有効)
では、2つの遺言書で「内容が重複しない部分」はどのような取扱いになるのでしょうか?
古い遺言書が遺産相続に使用されることはあるのでしょうか?
内容が重複しない部分:古い遺言書も適用範囲となる
さて、このページの本題です。
先ほど「内容が重複する部分=最新の遺言書が適用される」と説明いたしました。
内容が重複しない部分については、古い遺言書も適用対象となります。
したがって、古い遺言書であっても遺産相続に使用するケースがあるのです。
以下、具体例をもとに解説いたします。
具体例:複数の遺言書において内容重複しない
【基本事例】
1.自宅不動産をBに遺贈する(2015年作成)
2.すべての預貯金をCに遺贈する(2018年作成)
という2つの遺言書がある場合を想定してください。
2つの遺言に内容重複する部分はない!
上記遺言書では、
1.自宅不動産について(2015年作成)
2.預貯金について(2018年作成)
と書かれている財産は別々です。
要は、両者は内容が重複しないのです。
不動産はB、預貯金はCが取得
この場合には、「古い遺言書」も適用されます。
結論としては、
・自宅不動産→Bさんが取得
・預貯金→Cさんが取得
となるのです。
内容重複の有無により結論が異なる
ここまで説明したとおり「日付の古い遺言書」でも遺産相続で使用可能となる場合があります。
その判断基準は「内容重複があるか・ないか」によります。
・複数の遺言書で内容重複する箇所
→最新の遺言書のみ適用される
・複数の遺言書で内容重複しない箇所
→古い遺言書も適用範囲となる
という結論になります。
最後に、もうひとつ具体例を紹介してこのページを終えたいを思います。
具体例:古い遺言書の取扱い
【基本事例】
1.自宅不動産・全ての預貯金をBに遺贈する(2015年)
2.M銀行の預金はCに遺贈する(2018年)
という2つの遺言書がある場合を想定してください。
このケースでは、誰がどの遺産を取得するのでしょうか?
自宅不動産=内容重複なし
自宅不動産については、Bさんが取得します。
「1の遺言書」は日付としては古い遺言書です。
しかし、最新の遺言書と内容は重複していません。
したがって、「古い遺言書(2015年作成)」の内容に従い自宅不動産はBさんが取得します。
預貯金=一部内容に重複箇所あり
預貯金については、両者の遺言書で重複する部分があります。
1.全ての預貯金をBさんへ遺贈(2015年)
2.M銀行の預金をCさんへ遺贈(2018年)
具体的に「M銀行の預金」について両者の内容が重複しています。
結論としては、
・M銀行の預金→Cさんが取得
(内容が重複する部分は最新日付を適用)
・それ以外の預貯金→Bさんが取得
(内容重複しない=古い遺言書を適用)
となります。
まとめ
ここまで「古い遺言書(内容が重複しない部分)の取扱い」について解説いたしました。
古い遺言書でも遺産相続に使用できる場合がある旨を覚えていただき、今後の遺産相続にお役立てください。
・遺言書が複数あるケースも有り得る
・内容重複する箇所→最新日付の遺言書を適用
・重複しない部分→古い遺言書が有効
・文書の内容次第で「古い遺言書」でも使用できる