生前した遺産分割協議は有効か?
遺産相続というのは、いつか必ず発生することです。
親・自分が高齢である場合、万が一の場合に備え事前準備をしておくという方は大変多いです。
その中で、相続の準備として「親が元気なうちから兄弟姉妹で遺産分割について話し合いをしているケース」があります。
生前の話し合いの法律的効力はどの程度なのでしょうか?
このページでは「生前に行った遺産分割協議は有効か」について解説いたします。
死亡により遺産相続がスタートする
遺産相続により故人の一切の権利義務が相続人に承継されます。
遺産相続の基準時(効力発生時点)は、故人の死亡時点です。
死亡前、生前であれば権利義務は生存者に属します。
死亡後であれば、その相続人(配偶者、子供など)に属します。
相続発生まで相続人は確定しない
遺産相続の効力発生は、故人の死亡時点てす。
そのため、その時点までは相続人は一切確定しません。
法律には「同時存在の原則」という規定があります。
これは、故人の死亡時点で生存している人物でないと相続権を取得することはないという規定です。
そのため、現在存命の方も「将来相続権を取得する可能性のある人」に過ぎません。
もし、相続発生前に亡くなる等の事情があれば相続人とはならないのです。
生前にある相続権は潜在的なもの
よって、相続発生前に配偶者・子か持つのは潜在的な相続権に過ぎません。顕在化はしていません。
現状のまま故人が死亡した場合に、自分が相続に関する権利を取得するという程度のものなのです。
生前に遺産分割協議はできない
さて、このページの本題です。
生前に行う遺産分割協議の効力について解説いたします。
結論から申し上げますと、生前に遺産分割協議をすることはできません。法律的には有効ではありません。
これまで説明したように、生前に各人が持つ相続権は潜在的なものてす。
生前では「相続人・相続権」ともに確定していないためです。
法律的な効力は一切ない
生前にした話し合い(遺産分割協議)については法律上は効力がありません。
当然、生前に作成された書面(念書)などについても法律上の効力は一切ありません。
相続発生後に改めて協議、書類作成
相続発生により、ようやく各人の相続権が顕在化します。(確定する)
よって、それから
・遺産分割協議
・遺産分割協議書の作成
と手続きを進めていくことになります。
遺産相続を円満に進めるためには、生前協議も有効
ここまでの説明のとおり、生前の遺産分割協議については法律上の効力はありません。
しかし、まったくの無意味かと言えばそうとも言えません。
それは、実際に相続が発生したときに役立ちます。
遺産分割について、親族間で話し合いがこじれる(相続トラブル)に発展するリスクは当然あります。
事前協議は、その予防(円満相続の助け)になるのてす。
前もって話し合いが済んでいれば、実際の遺産相続のときにスムーズに事か運ぶ可能性が高くなります。
また、生前の協議がうまくいかなかった場合、遺言書を作成するなど将来に向けた対策を打つことが可能になります。
生前協議は、あくまで下交渉として
このように、生前の話し合いには将来への準備という側面があり全く無意味というわけではありません。
相続発生まで何もしないよりも、このような形で少しずつ準備をされるのが良いと思います。
まとめ
ここまで「生前にした遺産分割協議は有効か」という論点について解説いたしました。
法律的な効力はないということを覚えていただき、今後の遺産相続にお役立てください。
・生前に相続人、相続権は確定しない
・生前の遺産分割協議、念書は有効でない
・ただ、将来の相続トラブル防止の側面がある