未成年特別代理人の選任申立ての方法
相続人に「親権者・未成年の子」が含まれるケースは要注意です。
遺産分割協議の当事者に親権者と未成年の子が混在している場合には、親と子の利益が対立する可能性があります。
そのため、親の親権(法定代理権)が制限されるのです。
(親は未成年者を代理して遺産分割協議をすることはできない)
その場合には、遺産分割協議のみ「特別に」代理する人=特別代理人の選任が必要です。
このページでは、特別代理人選任申立ての方法について解説します。
特別代理人は家庭裁判所にて選任されます
特別代理人は、誰でもすぐになれるというわけではありません。
家庭裁判所の特別代理人選任を経て、初めて特別代理人となるのです。
では、どういった人が特別代理人になるのでしょうか。
今回の遺産相続に直接関係のない親族が就任することが多い
特別代理人は、全く面識のない第三者が特別代理人に選任されるということはありません。申立て段階で、こちらから候補者を推薦することが認められているからです。
一般的には「今回の遺産相続に利害関係のない親族の方(祖父母・叔父・叔母)」が特別代理人に選任されることが多いようです。
もちろん、私たちのような専門職(弁護士・司法書士ほか)が特別代理人に就任することも可能です。
管轄の家庭裁判所に選任申立てを行う
特別代理人選任申立の流れとして、まず、管轄の家庭裁判所へ特別代理人選任の申立を行います。
管轄裁判所とは「未成年の子の住所地」を管轄する家庭裁判所です。
【例:未成年者の住所が東京23区内の場合】
子の住所が東京23区内であれば「東京家庭裁判所」に特別代理人選任申立をします。
特別代理人選任の申立ては、
・親権者など親族
・専門職に依頼(弁護士・司法書士)
が行うことが一般的です。
特別代理人選任申立て(遺産分割協議)の必要書類
なお、特別代理人選任申立の際には事前に書類の準備が必要です。
特別代理人選任申立の一般的な必要書類について紹介いたします。
1.親権者と未成年者の戸籍謄本
未成年の子の戸籍謄本と、親権者の戸籍謄本が各1通必要となります。
なお、親子が同じ戸籍に入っている場合は1通のみで大丈夫です。
2.特別代理人候補者の住民票又は戸籍の附票
特別代理人候補者の住所を証明する書類を提出します。
なお、特別代理人選任は申立の段階で候補者を挙げることができ、候補者がそのまま選任されることが一般的です。
そのため、申立より前に特別代理人となってくれる人を探しておかなければなりません。
なお、特別代理人は親族が選任されることが多いです。
ただし、特に資格に制限はございませんので親族以外の方でも問題ありません。
3.遺産分割において利益相反の事実が分かる資料
特別代理人選任を必要とする理由「利益相反の事実がわかる資料」の提出が必要となります。
【具体例:利益相反の事実がわかる資料とは?】
親子間で遺産分割協議をする場合には、特別代理人選任申立の際に「遺産分割協議書の案」を提出します。
以上が、特別代理人選任申立に必要な書類となります。
原則として未成年者の法定相続分確保
遺産分割協議書案を提出する際には注意が必要です。
遺産分割協議書の内容が未成年の子にとって不利な内容の場合は、特別代理人の選任が認められないことがあるからです。
不利な内容とは、未成年の子が相続する財産の割合が法定相続分を下回る場合のことです。「未成年者の法定相続分の確保」が基本路線となっています。
【ただし例外もある】
ただし、事情によっては「全ての遺産を親権者名義にしたい」ということもあるでしょう。
そのような場合、未成年者の法定相続分を確保していない相続案でも特別代理人選任がされることがあります。(例外的に)
特別代理人が選任されたら
特別代理人選任申立から約1か月で特別代理人が選任され選任審判書が送られます。この選任審判書が特別代理人の権限を証明する書類です。
特別代理人が選任されたら、実際に遺産分割協議書の作成に入ります。
未成年者は遺産分割協議に参加する資格がありません。
そのため、未成年者に代わって特別代理人が署名押印を行うのです。
まとめ
ここまで未成年者に対する特別代理人選任申立てについての解説いたしました。
特別代理人を選任することによって、未成年者が相続人に含まれていても相続手続きを進めることができるという仕組みです。
・特別代理人は必要書類を揃えて家庭裁判所へ申し立てが必要
・特別代理人には相続に関係のない親族(叔父、叔母)が就任することが多い