遺贈登記は共同申請?それとも単独申請?
遺贈の内容に不動産が含まれるときには遺贈登記の申請が必要です。
遺贈登記など不動産登記を申請する場合
・単独申請
・共同申請
と2つの申請形態があります。
遺贈登記は受遺者が単独申請できるのでしょうか?
それとも共同申請の形態を取るのでしょうか?
このページでは「遺贈登記は共同申請か単独申請か」について解説いたします。
共同申請と単独申請について
まず不動産登記制度における共同申請、単独申請について解説しようと思います。
共同申請について
不動産登記の多くが共同申請となります。
共同申請とは、登記申請により利益を受ける側を登記権利者、不利益となる側を登記義務者として、双方が共同で登記申請をします。
売買による不動産名義変更では、
購入者(登記により不動産を取得する人)が登記権利者
売却者(登記により不動産名義を失う人)が登記義務者となります。
生前贈与による不動産名義変更では、
受贈者(贈与を受ける人)が登記権利者
贈与者(贈与する人)が登記義務者となります。
このように多くの登記申請では共同申請の形態となります。
単独申請について
逆に単独申請とは不動産名義人(新所有者)が単独で登記申請できる形態です。
購入者⇔売却者
受贈者⇔贈与者
のように利害対立のないような場合には単独申請となります。住所変更登記などが単独申請の代表例です。
相続登記は単独申請
相続登記は単独申請になります。
相続登記とは、故人→相続人へと不動産名義変更をする手続きです。
不動産を相続する人が単独で登記を行うことができます。
故人と相続人とは利害対立関係にありませんし、そもそも現名義人である故人は亡くなっているという事情もあります。
相続登記は単独申請ということを覚えておいてください。
それでは本題です。
遺贈登記は単独申請なのでしょうか?
それとも共同申請なのでしょうか?
遺贈登記は共同申請です!
遺贈と相続は大変よく似ています。
故人所有の不動産名義変更の手続きなので同じ規定を準用している部分もたくさんあります。
しかし、遺贈登記は共同申請になります。
申請方法は相続登記とは大きく異なります。
登記義務者には誰がなるの?
遺贈登記が共同申請であることを説明いたしました。
しかし、不動産名義人(遺言者)は既に亡くなっています。それでは、共同申請の際、いったい誰が登記義務者になるのでしょうか?
遺言執行者の有無により登記義務者が変わる!
遺贈登記の際の登記権利者は財産を受けとる人(受遺者)になります。
登記義務者については、事例により異なりますので申請人の判断に注意が必要です。
【遺言執行者がいない場合】
この場合には遺言者(故人)の相続人全員が登記義務者となります。
登記権利者:遺贈を受ける人
登記義務者:遺言者の相続人全員
の共同申請で遺贈登記をします。
【遺言執行者がいる場合】
遺言執行者がいる場合には遺言執行者が登記義務者となります。
登記権利者:遺贈を受ける人
登記義務者:遺言執行者
の共同申請になります。
遺言執行者がいない、協力してくれない相続人がいるときはどうすれば?
遺贈手続きを進めていく中で
・遺言で遺言執行者が指定されていない
・相続人が不存在(いない)
・相続人のなかに非協力的な人がいる
といったことがあります。
このようなときには、家庭裁判所に遺言執行者選任を申し立てましょう。
遺言執行者は遺言書のなかで指定することも可能ですが、家庭裁判所に選んでもらうこともできるのです。
受遺者を遺言執行者にすることができる。事実上の単独申請が可能に!
ここまでの説明のなかで遺贈登記は共同申請ということをご理解いただけたと思います。
登記権利者(受遺者)
登記義務者(遺言執行者または相続人全員)
ということです。
登記権利者と登記義務者は別人と考えていると思いますが、実は遺言執行者(登記義務者)に受遺者を指定することが認められています。
その結果
・登記権利者(受遺者)
・登記義務者(遺言執行者)
を同一人物とすることができ、事実上の単独申請が可能となるのです。
受遺者を遺言執行者に選任することで遺贈登記の手続きがとてもシンプルになります。
これから遺言執行者選任を行う場合には、受遺者を遺言執行者にすることも選択肢のひとつに入れておくと良いでしょう。
まとめ
ここまで「遺贈登記は共同申請・単独申請のどちらか?」という論点について解説してきました。
遺贈登記は共同申請。ただ、受遺者を遺言執行者に指定することで事実上の単独申請が可能ということを覚えておいてください。
・遺贈登記は共同申請
・登記権利者は受遺者
・登記義務者は遺言執行者又は相続人全員
・遺言執行者に受遺者を指定することで事実上の単独申請が可能