包括遺贈・特定遺贈には農地法の許可がいる?
遺言により財産を贈与することを「遺贈」といいます。
遺贈の対象に農地(田・畑)が含まれることがあります。
この場合、農地法の許可が必要となるのでしょうか?
このページでは、遺贈(包括遺贈・特定遺贈)と農地法の許可について解説いたします。
前提知識:名義変更と農地法の許可
まず、前提知識として「農地法の許可と名義変更」の関係について解説いたします。
【原則:農地法の許可が必要となる】
農地(田・畑)の名義変更(売買や贈与)には、「農地法の許可が必要」です。
農地の効率利用のため、農地法の許可が降りなければ農地(田・畑)を取得できないというのが原則になります。
相続の場合=農地法の許可は不要!
上記で説明したとおり、原則として農地の名義変更には農地法の許可が必要となります。
しかし、遺産相続は例外されています。
相続により農地の名義変更を行うときは、「農地法の許可は不要」という扱いになっています。
では、遺贈はどうなるのでしょうか?
遺贈と農地法の許可の関係(包括・特定)
遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」という2種類があります。
包括遺贈とは「全財産をAに遺贈する」というように財産を特定せず包括的な遺言書がある場合です。
特定遺贈とは「甲土地をAに遺贈する」という財産を特定した遺言書がある場合です。
遺贈と農地法の許可に関しては、
・包括遺贈
・特定遺贈
の違いによって結論が異なります。
以下、それぞれについて詳しく解説いたします。
包括遺贈=農地法の許可は不要!
まず、包括遺贈について説明いたします。
結論から申し上げますと、包括遺贈の場合は「農地法の許可は不要」です。
包括遺贈を受けた人(包括受遺者)は、相続人と同じ権利義務を持ちます。
相続による名義変更は「農地法の許可が不要」という取扱いです。
したがって、包括遺贈も相続に準じて農地法の許可が不要になっています。
特定遺贈は2つの類型に分かれる
次に特定遺贈と農地法許可の関係について解説いたします。
なお、特定遺贈は2つの類型に分かれます。
1.相続人以外に対する特定遺贈
2.相続人に対する特定遺贈
の2つです。
両者は結論が真逆となります。
以下、それぞれについて詳しく解説いたします。
1.相続人以外へ特定遺贈されたとき:農地法許可が必要!
まず「相続人以外へ特定遺贈がされて場合」について説明いたします。
以下、簡単な特定遺贈の具体例をもとに解説いたします。
【基本事例】
・遺言書を書いた人A(祖父)
・特定遺贈を受ける人C(孫)
・CはAの孫なので、相続人ではない
・「甲土地(農地)をCに遺贈する」という特定遺贈の旨の遺言書あり
上記のような事例を想定してください。
本ケースでは、名義変更にあたり「農地法の許可が必要」という取扱いになります。
(相続人以外へ特定遺贈をする場合は農地法の許可が必要)
贈与に準じて扱われる(相続ではない)
農地を贈与する場合には「農地法の許可が必要」という取扱いです。
そのため、特定遺贈も贈与に準じて農地法の許可が必要になります。
2.相続人へ特定遺贈されたとき:農地法の許可は不要!
次に「相続人に対して特定遺贈がされた場合」について説明いたします。
【基本事例】
・遺言書を書いた人A(親)
・特定遺贈を受ける人B(子)
・BはAの子供
・「甲土地(農地)をBに遺贈する」という特定遺贈の旨の遺言書あり
という事例を想定してください。
本ケースでは、名義変更にあたり「農地法の許可は不要」という取扱いになります。
(相続人へ特定遺贈をするとき農地法の許可は不要)
相続に準じて扱われる
農地を相続する場合には、農地法許可は不要という扱いです。
相続人に対する特定遺贈は、相続に準じて農地法の許可が不要となっています。
※平成24年に判例が出て「相続人への特定遺贈」の取扱いが変更されました。
以前は相続人に対する特定遺贈でも農地法の許可が必要でした。
しかし、現在は農地法の許可は不要という取扱いです。
まとめ
ここまで遺贈(包括遺贈・特定遺贈)と農地法についての解説いたしました。
遺贈の種類によって結論が異なる旨を覚えていただき、今後の相続手続きにお役立てください。
・包括遺贈のとき=農地法の許可不要
・特定遺贈(相続人以外への)=農地法の許可必要
・特定遺贈(相続人への)=農地法の許可不要