包括受遺者は遺産分割協議の当事者となるか?
相続発生後は、当事者間で遺産分割の話し合いを行います。
この話し合いのことを遺産分割協議とよびます。
法定相続人は当然に遺産分割協議の当事者となりますが、包括受遺者の立場はどうなるのでしょうか?
このページでは「包括受遺者は遺産分割協議の当事者となるか」について解説いたします。
包括受遺者とは?
まず「包括受遺者」という用語について説明いたします。
包括受遺者とは、簡単に説明すると「包括遺贈を受けた人」のことを指します。
遺贈=遺言書で財産を贈与すること
故人が、「遺言書によって財産を贈与すること」を遺贈といいます。
相続人でない人物(孫など)にも遺贈を行うことが可能です。
なお、遺贈には
・特定遺贈
・包括遺贈
と2つの種類があります。
包括遺贈とは?
包括遺贈とは、
・財産の全部を遺贈する
「例:全財産をAに遺贈する」
・包括的割合で遺贈する
「例:遺産の2分の1をAに遺贈する」
という形式の遺贈のことです。
包括遺贈を受けた人物のことを包括受遺者というのです。
包括受遺者の立場は相続人と同じ
遺贈の対象は、相続人に限られません。
そのため、法定相続人でない人が包括受遺者になる可能性もあります。
その際、包括受遺者は「相続人と同じ権利義務」を持ちます。
要するに、相続人と同じ立場ということです。
包括受遺者も遺産分割協議の当事者となる!
さて、このページの本題です。
先ほど「包括受遺者は相続人と同じ立場である」という説明をいたしました。
したがって、包括受遺者も遺産分割協議の当事者となります。
以下、具体例をもとに解説いたします。
具体例:遺産分割協議の当事者構成
【基本事例】
故人:A
法定相続人:B、C
「財産の2分の1を孫Dに遺贈する」という内容の遺言書あり
このような事例を想定してください。
本ケースでは孫であるDが包括受遺者となります。
【遺産分割協議の当事者構成】
この場合の遺産分割協議は、
・相続人であるB、C
・包括受遺者に該当する孫D
の3人となります。
包括受遺者は相続人に準じるため、遺産分割協議に加える必要があるのです。
遺産分割協議は当事者の全員参加が要件
なお、遺産分割協議は
・関係当事者の全員参加(相続人・包括受遺者)
・全会一致での合意
が成立要件です。
包括受遺者を除いて行われた遺産分割協議は「無効」という取扱いになります。
遺産分割協議には、包括受遺者の参加が必須要件なのです。
包括遺贈の遺言書を隠している相続人がいたら?
包括受遺者は場合によって「法定相続人以外」ということもあり得ます。
そのため、本来の相続人の方にとっては、あまり好ましくない事情だと思います。
しかし、「遺言書の存在を知っていながら破棄する・隠す」という行為は断じて許されません。
このような処置をした相続人は「相続欠格」に該当します。
これにより、その人物の相続権が剥奪されてしまうのです。
故人の遺言書(包括遺贈)がある場合には、速やかに遺言書を公開し受遺者も含めて遺産相続の手続きを進めていくべきなのです。
まとめ
ここまで「包括受遺者が遺産分割協議の当事者となるか」について解説いたしました。
包括受遺者も協議に参加必須ということを覚えていただき、今後の遺産相続にお役立てください。
・包括受遺者=包括遺贈を受けた人
・包括受遺者は相続人と同じ立場
・したがって、遺産分割協議の当事者となる
・包括受遺者を除いてされた遺産分割は無効