戦災・震災により戸籍謄本が取得不可(焼失)の場合
相続手続きを行う際の必須書類に「戸籍謄本」があります。
これは、故人の出生~死亡までの全ての戸籍謄本(原戸籍・除籍)が必要となります。
稀に全ての戸籍を取得できないことも..
通常の場合では、問題なく全ての戸籍を取得可能です。
ただ、稀に取得不可の場合がでてきます。
東京で多いのが「関東大震災・戦争等による焼失」です。
この場合は、どのように手続きを進めればよいのでしょうか?
このページでは「戦災・震災により除籍謄本が取得不可の場合」について解説いたします。
出生~死亡までの戸籍を揃える理由
上記で説明したとおり、相続手続きでは故人の出生~死亡までの一連の戸籍が必要となります。
では、なぜ全戸籍が必要となるのでしょうか?
(なぜ死亡時点の除籍だけではダメなのでしょうか?)
その理由は「相続人確定」のためです。
出生~死亡までそろえる=故人の家族関係が分かる
出生~死亡までの戸籍を取得することで故人の親族関係を完全に把握することができます。
・子の有無(存命・死亡)
・配偶者の有無(存命・死亡)
など、法定相続人に該当する人物を特定するために、全戸籍が要求されるのです。
震災・戦災による焼失の場面
通常であれば、全ての戸籍を揃えることはそう難しくありません。
ただ、レアケースですが全戸籍を揃えられないこともあるのです。
その代表例が「関東大震災・戦争による焼失」です。
戸籍の一部期間が欠けている状態に
関東大震災・戦争による焼失は、私のこれまでの経験上「東京都中央区・港区」あたりで多くみられます。
この場合、復興後に戸籍を再製といって作り直しています。
ただ、どうしても一部欠けている部分が出てきます。
そもそも、再製にあたって参照すべき元の情報が焼失・紛失しているためです。
結果として、戸籍に関して欠けている部分(空白部分)がどうしても出てきてしまうのです。
具体例:戸籍の空白部分
【基本事例】
・故人Aさんの相続手続き
(1930年生:2018年死亡)
・戦災、震災による焼失あり
という場面を想定してください。
この場合、Aさんについては出生~死亡までの全戸籍が必要です。
ただ、震災・戦災により一部部分(例えば昭和10年~20年の部分)に空白部分が生じます。
結果として、出生~死亡の全戸籍は揃いません。
戸籍に空白期間がある状態で相続手続きを進める
空白部分があることにより、故人の法定相続人について100%証明できなくなります。
ただ、震災・戦災による焼失に関してはどうしようもありません。
この状況を改善することはできませんので、このまま相続手続きを進めていくしかありません。
役所にて「告知書」といった書面を発行してくれる
相続手続きを進めるにあたって、本籍地のある役所に戸籍請求を行います。
「震災・戦災による焼失=戸籍に空白期間が生じる」といった場合には、「告知書」といった書面を交付してくれます。
(書類の名称は各役所によって異なると思いますが。)
告知書の中には、
・震災や戦災により戸籍が一部焼失してしまったこと
・戸籍を再製したが一部期間に空白がある旨
等が記載されています。
手続き申請先に事前に確認
戸籍の空白部分については、告知書にて対応するしかありません。
ただ、この場合は事前に申請先役所に必要書類の確認をしておくとよいでしょう。
・相続登記→管轄法務局
・金融機関→該当支店
戸籍が出生~死亡まで完全に揃っていないため、追加の必要書類を求められる可能性があります。
そのため、事前に照会を掛けておくと安心でしょう。
まとめ
ここまで「震災・戦災により戸籍謄本が焼失している場面」について解説しました。
本ページ内容を参考に今後の相続手続きにお役立てください。
・相続手続きには「出生~死亡」の戸籍が必要
・震災、戦災により戸籍に空白期間が生じることもある