旧民法が適用される相続とは?
相続が発生した場合、相続人等の法律関係は「民法」という法律の規定により決定します。
なお、法律の規定は時代によって改正されていくものです。
そのため、昔の民法(旧民法)と今の民法(現民法)とでは、規定が異なる箇所が多くあります。
昔に発生した相続手続きをする場合には、現民法ではなく旧民法(古い民法)が適用されることとなります。
このページでは、旧民法が適用される相続について解説いたします。
昔に発生した相続:旧民法の対象となる可能性あり
遺産相続にどの民法が適用されるかは「被相続人の死亡年月日」が基準となります。
亡くなった年月日に適用されていた法律が、今でも適用されるのです。
最近お亡くなりになった方については、当然ながら現在の民法が適用されます。
反対に「大昔に亡くなって相続手続きを放置していた」というケースでは、旧民法の存在にも注意する必要があるのです。
前提知識:現民法の規定について
まず、前提知識として現在の民法の規定をおさらいしましょう。
現民法は、昭和56年1月1日以降に発生した相続に適用されます。
相続人の順位と相続割合は以下のとおりです。
・第一順位 配偶者2分の1、子(直系卑属)2分の1
・第二順位 配偶者3分の2、親(直系尊属)3分の1
・第三順位 配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1
代襲相続があります。
但し、兄弟姉妹の代襲相続は一代限りと規定されています。
旧民法の現民法と異なる点:注意すべき点について
ここからは「旧民法の現民法とは異なる点・旧民法の注意が必要な点」を紹介いたします。
一つ前の旧民法は、昭和23年1月1日~昭和55年12月31日の間の相続に適用される旧民法です。
「昭和23年1月1日~昭和55年12月31日」この期間に亡くなっている方については、これから紹介する昔の民法が適用されます。
この旧民法は現民法と相続分が異なります。
旧民法の相続人の順位と相続割合は以下のとおりです。
・第一順位 配偶者3分の1、子(直系卑属)3分の2
・第二順位 配偶者2分の1、親(直系尊属)2分の1
・第三順位 配偶者3分の2、兄弟姉妹3分の1
代襲相続の規定も異なる
また、代襲相続の規定も異なります。
この時代の旧民法は、兄弟姉妹の代襲相続に制限はありません。
したがって、延々と代襲相続が発生する可能性があります。(現民法と異なる)
更に一つ前の旧民法が適用される相続について
更に一つ前の旧民法は、昭和22年5月3日~昭和22年12月31日の間に発生した相続に適用される旧民法です。
この旧民法は、日本国憲法の施行に伴い定められた旧民法です。
相続人の順位と相続分に関しては、
・第一順位 配偶者3分の1、子(直系卑属)3分の2
・第二順位 配偶者2分の1、親(直系尊属)2分の1
・第三順位 配偶者3分の2、兄弟姉妹3分の1
となります。
これは、先ほど説明した「昭和23年1月1日~昭和55年12月31日までの相続に関して適用される旧民法」と同じです。
兄弟姉妹の代襲相続がない
先ほど紹介した旧民法との大きな違いは「兄弟姉妹の代襲相続」に関する規定です。
この時代の旧民法には兄弟姉妹の代襲相続の規定はありません。
戦後の旧民法の規定は、以上のとおりです。
なお、戦前に発生した相続については戦前の旧民法が適用されることとなります。
こちらは現在問題となる事例はほとんどありませんので、ここでの記載は省略いたします。
まとめ
ここまで旧民法が適用される相続についての解説いたしました。
昔の法律は現行規定と少々異なることを覚えていただき、今後の遺産相続にお役立てください。
・昔の相続は旧民法(昔の民法)が適用される。
・何十年も相続を放置しているときは、旧民法について考える必要がある。