遺産分割協議書へ押印後に相続人が死亡。文書は有効?
遺産相続が発生した後は、相続人全員で話し合い(遺産分割協議)を行います。
話し合いがまとまった後は、証明資料として「遺産分割協議書」という文書を作成することが一般的です。
事例としては稀ですが、
・遺産分割協議書の署名押印後にひとりの相続人が死亡した
というケースが考えられます。
この場合、文書の効力はどうなるのでしょうか?
再度、書類を作り直す必要があるのでしょうか?
このページでは「遺産分割協議書の押印後に相続人が死亡したケースの文書の効力」について解説いたします。
各相続人が行う遺産分割協議書への署名押印
遺産分割に関する話し合いがまとまった際には「遺産分割協議書」というタイトルの書面を作成します。
これは、
・相続手続きの申請時に使用する
・親族間の後々のトラブル予防
という観点から作成されるものです。
協議書の末尾には相続人の全員が
・署名
・実印での押印
・印鑑証明書の添付
を行います。
遺産分割協議書の押印後に相続人死亡のケースとは?
本ページで扱う「遺産分割協議書の押印後に相続人が死亡したケース」とは、
・相続人全員の署名
・全員が実印で押印
この作業が完了したのち、相続人のうちの一人が亡くなったという事例です。
以下、分かりやすいように具体例をもとに解説いたします。
具体例:遺産分割協議書の押印後に相続人死亡
【基本事例】
故人:A
相続人:配偶者B、子C
・1月2日に遺産分割協議書に署名押印
↓
・2月1日に配偶者Bさんが亡くなった
というケースを想定してください。
この場合、「1月2日に作成された遺産分割協議書」は法律文書として有効なのでしょうか?
文書の効力は有効!
さて、このページの本題です。
結論から申し上げますと、「遺産分割協議書は文書として有効」です。
書類作成時を基準に考える
今回のケースで、遺産分割協議書を作成した日にちは「1月2日」です。
この時点では、
・配偶者Bさん
・子Cさん
という相続人全員が存命です。
両者が署名押印をすることにより、「1月2日付で」有効な遺産分割協議書が完成するのです。
その後の当事者の死亡は文書の効力に影響なし
遺産分割協議書の押印後に「相続人の一人が死亡」という事情があったとしても、それは文書の効力に何ら影響を与えません。
あくまでも「文書の作成時点」で有効な文書が成立しているわけです。
・当事者のうちのひとりの死亡
・遺産分割協議書の効力
この2つは全く別問題なのです。
「二次相続の発生」・「文書の効力」は別問題!
先ほどから説明しているとおり
・相続人のひとりの死亡
・遺産分割協議書の文書としての効力
は別の問題です。
「相続人のうちのひとりの死亡」は「数次相続(二次相続)」という問題になります。
数次相続(二次相続)によって、
・(故)相続人の権利が
・(故)相続人の相続人に移る
という効果があります。
文書を作り直す必要もない
二次相続による承継者が登場したからといって、先に作成された遺産分割協議書の効力は揺るぎません。
そのため、
・再度の遺産分割協議
・再度の書類作成
といった作業は不要です。
相当昔に作成された遺産分割協議書でも手続きに使用可能
最後に、事例としては稀ですが
・遺産相続の手続きを何十年も放置していた
・当時に作成された遺産分割協議書が手元にある
というケースについて解説いたします。
ここまで
・相続人のうちひとりが死亡した場合であっても
・遺産分割協議書は依然として有効である
という説明をしてきました。
よって、「相当昔に作成された相続書類(今は当時の関係者が死亡している)」でも依然有効という結論になります。
相当昔の書類(今は当事者が誰も生きていない)ケースでも、手続きに使用することが可能なのです。
まとめ
ここまで「書類押印後に相続人が死亡したケースの文書の効力」について解説いたしました。
相続人死亡と文書の効力は別問題であるということをご理解いただき、今後の遺産相続にお役立てください。
・遺産分割協議書の押印後に相続人のひとりが死亡した場合
・遺産分割協議書は法律文書として有効
・当事者ひとりの死亡によって文書の効力に影響なし
・2つは全くの別問題として扱う