遺言執行者を選任した方がよい事例(認知症の相続人あり)
故人が生前に遺言書を残していることがあります。
遺言書の内容を実現するための人物を「遺言執行者」といいます。
大半の手続き(認知・廃除等一部を除く)では、遺言執行者選任は必須ではありません。
ただ、事例によっては遺言執行者を選んでおいた方が手続きがスムーズに進むということもあります。
遺言執行者選任を推奨する代表例が「法定相続人の中に認知症の方がいる場合」です。
このページでは「遺言執行者を選任した方が良い場面(認知症の相続人あり)」について解説いたします。
遺言執行者とは?
遺言執行者とは、
・遺言の内容実現に向けての役割を担う人
のことを指します。
・遺言書の中で指定
(遺言書の中に「遺言執行者をAに指定する」という文言あり)
・家庭裁判所による選任
といった方法で遺言執行者が就任します。
遺言執行者が必須ではない手続きが多い!
ただ、遺言書があるからといって、必ずしも遺言執行者選任が必要というわけではありません。
・認知
・相続人の廃除
といった一部例外を除き大半の手続きは遺言執行者なしでも手続きを進めることが可能です。
遺言執行者なし=相続人全員が手続きに協力する
では、遺言執行者がいない場合はどのように遺言書の内容を実現させるのでしょうか?
それは「法定相続人全員」での手続きとなります。
相続発生により故人に属する一切の権利義務が相続人に承継されます。
したがって、故人の遺言書の内容実現は法定相続人全員の協力のもとに行われることとなります。
認知症の人=判断能力なし
先ほど「遺言執行者なし=相続人全員で手続きを進める」という説明をいたしました。
ここで、問題が生じることがあります。
それがこのページの本題である「認知症の相続人」です。
判断能力のない人物は有効な署名捺印をできない
遺言書の内容実現の際、法定相続人の「署名押印」が必要になります。
その場合、認知症本人に署名押印をしてもらうのは問題があります。
そもそも、法律行為を行う際には本人の「正常な判断能力」が求められます。
判断能力のない人物が署名押印した場合は「無効」という取扱いになるのです。
成年後見人が必要となる
認知症などを発症し判断能力がない方には「代理人」を立てることが必要となります。
実際には「成年後見人」という名称の代理人が付けられます。
以降、本人の法律行為は成年後見人が代理で行うのです。
成年後見人を選任するのは大変な作業
ただ、成年後見人を選任するのは大変な労力を要することです。
また、遺産相続が終わった後も成年後見人の代理人としての業務は続きます。
・本人の財産管理
・家庭裁判所への業務報告
など成年後見人(代理人)となる方には負担となることが多くございます。
遺言執行者を選任=認知症の方は手続きに関与不要
ここまで、「遺言執行者を選任しない場合には相続人全員が手続に関与する」という説明をいたしました。
その結果、
・認知症の相続人について
・成年後見人が必要
という説明をいたしました。
ただ、これらを回避する方法もあります。(このページの本題)
それは、遺言執行者を選任することです。
遺言執行者あり=全て遺言執行者が署名捺印となる
遺言執行者がいる場合は、遺産相続の手続きが遺言執行者が進めていくことになります。
要するに、ほかの相続人の方の手続き関与が不要となるのです。
・遺言執行者なし=法定相続人全員で手続き
・遺言執行者あり=遺言執行者が手続をする
と覚えておいてください。
認知症の方がいても手続きがスムーズに進む!
認知症の相続人がいる場合であっても、遺言執行者を選任すれば手続きがスムーズに進みます。
各書類への署名押印は全て遺言執行者が行います。
遺言執行者がいる場合、法定相続人の方の手続きへの協力は不要になるのです。
以下、具体例にて説明いたします。
遺贈登記の例:執行者なし
【基本事例】
故人A
法定相続人B、C
受遺者D
上記のようなケースを想定してください。
遺言執行者がいないケースでは、
・登記権利者D
・登記義務者B、C
となります。(法定相続人全員BCの関与が必要)
遺贈登記の例:執行者あり
【基本事例】
故人A
法定相続人B、C
受遺者D
遺言執行者E
というケースを想定してください。
この場合は、
・登記権利者D
・登記義務者E
となります。(法定相続人全員BCの関与が不要)
遺言執行者がおりますので、手続きが遺言執行者自身が担当します。
法定相続人の署名捺印は不要なのです。
その結果、仮に法定相続人の中に認知症の方がいてもスムーズに手続きを完了できるのです。
上記の具体例で説明したとおり、
・遺言書がある
・相続人の中に認知症の方がいる
というケースでは私は迷いなく遺言執行者選任をすることを推奨しています。
まとめ
ここまで「遺言執行者選任の推奨例(認知症の相続人がいる)」について解説いたしました。
このページの内容を参考にしていただき、今後の遺言執行にお役立てください。
・遺言執行者は必須ではないことも多い
・ただ、選任した方が手続がスムーズに進むこともある
・代表例「認知症の法定相続人がいるケース」