失踪宣告(行方不明者)とは?
相続が発生したとき、相続人全員が話し合い(遺産分割協議)を行って相続手続きを進めていくことになります。
では、行方不明の相続人がいるときはどうすればいいのでしょうか?
行方不明の相続人がいる場合は、失踪宣告という方法を取ることにより遺産分割をできるようになります。
このページでは失踪宣告(行方不明者がいる相続)について解説いたします。
行方不明者がいる場合の遺産相続
行方不明の相続人がいる場合の遺産相続は厄介です。
通常の方法より複雑となるからです。
通常の相続手続きでは、相続人全員での話し合いによって相続手続きを進めます。
この話し合いは「相続人全員の参加」が必須要件です。
そのため、相続人に行方不明者がいる場合は手続きが困難となるのです。
失踪宣告とは?
相続人に行方不明者がいる場合に有効な方法として「失踪宣告」という制度があります。
失踪宣告とは「行方不明者の相続人を死亡した」とみなす手続きのことです。
失踪宣告により、「行方不明者=死亡」とみなされます。
失踪宣告(死亡みなし)により相続人が確定します。
そのため、遺産分割協議を有効に行うことができるという制度です。
普通失踪宣告・特別失踪宣告の2種類がある
失踪宣告には、
1.普通失踪宣告
2.特別失踪宣告
の2種類があります。
以下、それぞれについて解説いたします。
普通失踪宣告とは?
普通失踪宣告は、行方不明者が失踪したとき(災害・事故等ではない場合)に申し立てる失踪宣告の種類です。
普通失踪宣告とは、行方不明者の生死が7年以上明らかでないときに失踪宣告の申し立てをすることができます。
行方不明となった時期から7年の期間が満了したときに死亡したとみなされます。
特別失踪宣告とは?
特別失踪宣告とは、災害や事故によって行方不明者が失踪したときに申し立てる失踪宣告の種類です。
飛行機事故・船舶事故・天災などの危難に遭遇した者の生死が、危難の去った後1年間明らかでないときに失踪宣告の申し立てをすることができます。
特別失踪宣告は、危難が去った時に死亡したものとみなされます。
失踪宣告は家庭裁判所への申立てが必要!
失踪宣告を申し立てることができるのは、行方不明者・失踪者の利害関係人です。
(利害関係人とは、失踪宣告の対象である不在者の配偶者や相続人に該当する者など法律上の利害関係を有する者のことを指します。)
利害関係人は、失踪宣告に必要となる書類を揃えて不在者の住所地又は居所地の家庭裁判所へ失踪宣告の申し立てをすることが必要となります。
その後、失踪宣告がされると行方不明者は死亡したものとみなされます。
失踪宣告により該当者について相続が発生するという流れです。
失踪宣告の効果:相続人が確定する
失踪宣告がされることにより、当該行方不明者は「死亡」と扱われます。
そのため、遺産相続について相続人が確定するという効果があります。
【基本事例】
・故人A
・子B、子C(子Cは行方不明者)
・子Cについて失踪宣告がされた
という事例を想定してください。
この場合、失踪宣告前では「法定相続人はB・C」の2名です。
Cが行方不明のため、遺産相続の手続きを進めることが困難になります。
しかし、失踪宣告により「C」は死亡したものとみなされます。
結果、相続人は「Bのみ」と確定し、相続手続きを進められるようになるのです。
失踪宣告により婚姻関係も解消される
また、死亡したとみなされる失踪宣告により、配偶者との婚姻関係も解消されることとなります。
もっとも、3年以上生死不明であることは離婚事由とされているため、婚姻関係の解消については7年を待つことなく手続きをすることができます。
失踪者が帰ってきたとき
では、失踪宣告により死亡したとみなされていた者が生きて帰ってきた場合は失踪宣告の効力はどうなるのでしょうか?
その場合は、利害関係人は失踪者が生存していることを家庭裁判所へ証明をすれば失踪宣告は取り消されます。
失踪宣告が取り消された結果、当該人物は死亡していないことになります。
そのため、相続が発生していないこととなります。
しかし、失踪宣告により相続があったものとして既に財産の移転が行われているわけです。
それを全て元の状態に戻すというのは非現実的です。
そのため、失踪宣告により財産を相続した者は、現存利益のみを返還すれば足りると規定されています。
まとめ
ここまで失踪宣告(行方不明・消息不明)について解説いたしました。
行方不明者がいる場合の対応策のひとつとして覚えていただき、今後の遺産相続にお役立てください。
・行方不明者がいるとき=遺産分割協議は困難
・失踪宣告という制度がある
・失踪宣告により行方不明者は死亡とみなされる
・相続人が確定するため、相続手続きを進めることができる