相続分譲渡がされた際の遺産分割の当事者は?
相続が発生したとき、各相続人は法定相続分を取得します。
一般的には、遺産分割協議(話し合い)をして相続方法を決めていくことが多いです。
ただ、事例としては稀ですが「相続分の譲渡」という制度があります。
相続分譲渡があった場合には、遺産分割の当事者に注意が必要です。
このページでは相続分の譲渡と遺産分割協議について解説いたします。
遺産分割前であれば相続分の譲渡が可能!
遺産分割協議前であれば、相続分を有する相続人は他人に自分の相続分を譲渡することができます。
このことを相続分の譲渡といいます。
相続分の譲渡先は「ほかの法定相続人・相続人以外の他人(第三者)」でも構いません。
誰に対してでも相続分を譲渡することが可能ということです。
遺産分割協議の当事者に要注意!
なお、相続分譲渡があった時には遺産分割協議の当事者に注意が必要です。
これより、
・法定相続人に対して譲渡がされた場合
・法定相続人以外に譲渡がされた場合
の2つのケースについて、それぞれ解説いたします。
相続分の譲渡と遺産分割協議:相続人対して譲渡された
まずはじめに「相続人に対して相続分譲渡がされた場合」について解説いたします。
具体的には、相続人が他の相続人(兄弟など)に相続分を譲渡したケースです。
【基本事例】
被相続人A
相続人B・C・D
相続人Bが、相続人Cへ自分の相続分を譲渡
という事例を想定してください。
譲渡をした人物=遺産分割の当事者から外れる!
この場合、遺産分割協議の当事者は「C及びD」となります。
相続人Bは遺産分割協議に参加する必要はありません。
相続分とは「相続人が遺産全体の上に持つ包括的持分または相続人の地位」です。
相続分を譲渡したBは、相続人としての地位をCに譲渡しておりますので遺産分割協議に参加する必要は無いということです。
相続分の譲渡と遺産分割協議:相続人以外に相続分が譲渡された
次に「相続人以外の第三者へ譲渡された場合」について解説いたします。
【基本事例】
被相続人A
相続人B・C・D
相続人Bが、第三者Eへ自分の相続分を譲渡
という事例を想定してください。
譲受人(取得者)が遺産分割の当事者となる!
この場合、遺産分割協議の当事者は「C・D及びE」となります。
相続人Bは遺産分割協議に参加する必要はありません。
代わりに、相続分の譲渡を受けたEが遺産分割協議の当事者となります。
相続分の譲渡を受けた人は、相続人の地位を引き継ぐことになります。
よって、相続人と同じように扱う必要があるのです。
第三者に相続分の譲渡がされたときの対応
上記の具体例でBが相続分を第三者のEに譲渡した場合、第三者のEは相続分を持ちます。
結果として、遺産分割協議はC・D・Eですることになります。
ただ、ここには問題(リスク)も含まれています。
第三者に相続分を譲渡されてしまうと、譲受人が相続人として振る舞うことになります。
結果として、遺産相続が円満・円滑に進まないリスクが大きくなるのです。
このような事態に備えて「相続分の取戻し」という規定が設けられています。
第三者に相続分が譲渡されたとき、他の相続人は金銭などを支払って相続分を取り戻すことが認められています。
まとめ
ここまで相続分の譲渡と遺産分割の当事者について解説いたしました。
遺産分割協議の当事者に気を付けていただき、今後の遺産相続にお役立てください。
・遺産分割前は相続分の譲渡が可能
・譲渡先は「法定相続人・それ以外の人物」でも可能
・相続分の譲渡とは、相続人の地位の譲渡である
・相続分の譲渡をした人=遺産分割協議に参加しない
・相続分の譲渡を受けた人=相続人でなくても遺産分割協議の当事者になる