相続人による名寄帳の取得方法
相続手続きをはじめる際、一番最初に行うのが「遺産の調査」です。
財産調査に漏れがあると、「後々相続手続きをやり直し」という可能性もあります。そのため、正確に行うべき作業です。
不動産調査の際に役立つ資料として「名寄帳」があります。
これは、市区町村にて取得することが可能なものです。
ただ、相続人が名寄帳を取得する際には注意が必要です。
なぜなら、名寄帳は「所有者しか取得できない書類」だからです。
このページでは「相続人による名寄帳の取得方法」について解説いたします。
名寄帳が必要になる背景
故人が不動産を所有しているというケースは大変多いと思います。
「不動産は自宅のみ」といった場合には、遺産の把握が容易です。
しかし、そう簡単にいかないケースも出てきます。
例えば、
・故人が不動産投資をしていた
・生前に相続により取得していた物件があるかも
このような事情は家族であっても知らされていないことがあります。
このようなケースで有効なのが「名寄帳」です。
名寄帳を取得することによって「故人名義の不動産」を漏れなく調査することができるのです。
名寄帳は所有者しか取得できません(原則)
名寄帳は「誰でも簡単に取得できる書類ではありません。」
(登記簿謄本は誰でも取得できる)
名寄帳は原則として「所有者のみ」が取得できる書類なのです。
所有者以外の方が請求しても「あなたはどういう権限があって?」、「所有者からの委任状はありますか?」と聞かれ、証明書を発行してもらえません。
相続人は名寄帳を取得できる!
遺産相続の場面では「不動産の名義人」は既に亡くなっています。そのため、実際に相続手続きのため名寄帳の請求をするのは「相続人」になります。
相続人は「故人の承継者」としての立場があるので名寄帳を取得することができます。
請求の際には「名義人の死亡&自分が相続人であること」を証明する!
先ほどの説明のとおり、相続人は名寄帳を取得する権限があります。
しかし、いきなり役所窓口に行ったところで、役所の方はあなたが正当な権利を持つ人なのかどうか判断がつきません。
自分が不動産名義人の相続人であると窓口で説明したところで、名寄帳を発行してくれることは絶対にありません。
では、どうするか?
この場合は、戸籍謄本を使って
1.名義人の死亡
2.自分が相続人に該当すること
を証明します。
この2点を明らかにして「自分には名寄帳取得の権利がある」ということを証明するのです。
具体的には
1.故人の死亡記載のある除籍謄本
2.相続人の現在の戸籍謄本(抄本)
が必要になります。
自分が相続人であれば、単独で取得できる!
複数の相続人がいる場合、ほかの相続人の協力は不要です。
名寄帳は「自分ひとりだけ」で取得することができます。
他の相続人から委任状をもらう必要もありません。
具体例:母A、長男B、長女Cの3人が相続人
長男Aは単独で名寄帳の請求ができる。
(母A、長女Cから委任状は要らない。母A、長女Cの戸籍は準備不要。)
委任状を発行することで第三者に取得してもらうことも可能!
「自分が仕事で忙しく平日役所にいけない・めんどくさい」
このような事情がある方は、第三者(親族・専門職等)に名寄帳の取得を依頼することもできます。
委任状に押す印鑑は「認印」で大丈夫です。
具体例:母A、長男B、長女Cの3人が相続人
長男Aは名寄帳の取得を叔父Dにお願いしたい。
↓
長男Aから叔父Dへの委任状が必要。
(母A、長女Cからの委任状は要らない。)
まとめ
ここまで「名寄帳の相続人からの取得」について解説してきました。
相続人が請求する場合には「関係性を証明する戸籍が必要」ということを覚えていただき、今後の相続登記の準備にお役立てください。
・相続人は故人の名寄帳を取得できる
・権限を証明するため戸籍謄本の提出が必要