抵当権抹消と相続登記の関係は?
相続登記の相談をいただく中で、不動産に抵当権の登記が付着しているケースがあります。
抵当権とは、不動産購入・家の建築の際に付けられる担保権(金融機関の住宅ローン)のことです。
相続登記の際には「抵当権」はどのように扱えばよいのでしょうか?
このページでは「抵当権抹消と相続登記」について解説いたします。
ローンを完済している場合:相続登記と併せて抵当権抹消が必要
住宅ローンを組むと土地・建物に「抵当権」が登記されます。
これは、金融機関が設定する担保権です。
抵当権抹消登記は自動では行われない!
住宅ローンの支払いが終わった場合、自動的に抵当権の登記が抹消されることはありません。
自分で(司法書士に依頼して)抵当権を抹消する登記申請が必要になるのです。
この手続きをしないと、いつまでも不動産に担保登記が付着した状態になってしまいます。
結果として、
・相続登記
・抵当権抹消登記
の2つの手続きが必要になります。
以下、相続登記に付随して行うべき抵当権抹消の手続き方法について解説します。
抵当権抹消と相続登記の手続き方法
抵当権抹消と相続登記ですが、
・相続発生前にローンを完済したのか
・相続発生後に完済したのか
によって手続きに若干の違いがあります。
相続発生前に住宅ローンを完済している
既にローンを完済しているのに、抵当権抹消をしないまま相続が発生したような事例です。
このときは、
1.相続登記の申請
↓
2.抵当権抹消登記の申請
という流れが一般的です。
先に抵当権抹消だけ行うことも可能
ただ、遺産相続の事案によっては
・親族間で遺産分割協議が上手くまとまらない
・相続登記を行える見通しが立たない
といった不安要素を含むケースもあります。
こういった場合では、相続登記を経ることなく抵当権抹消登記のみを先に行うことも可能です。
なお、抵当権抹消は相続人の中の一人から抵当権抹消の申請が認められています。(保存行為)
相続発生後に住宅ローンを完済している
次に、相続発生後にローン完済となったケースについて解説いたします。
住宅ローン返済中に債務者(=不動産の所有者)に相続が発生し、団信(団体信用生命保険)で住宅ローンを完済したような事例です。
こちらも先ほどと同じく、
1.相続登記
↓
2.抵当権抹消登記
という流れになります。
相違点:先に抵当権抹消だけ行うことは不可!
相続発生前に完済している時は、相続登記を経ることなく先に抵当権抹消登記のみ行うことも可能です。
しかし、相続発生後に住宅ローンを完済したときには、必ず
1.相続登記
↓
2.抵当権抹消登記
という順番でないといけません。
抵当権抹消書類は銀行から送られてくる
なお、抵当権を抹消する際には「銀行側の書類」が必要になります。
具体的には、
・解除証書(弁済証書)
・登記識別情報通知
・抵当権抹消登記の委任状
などです。
これらの書類については、ローン完済後に銀行から送られてくるものです。
送られるのはローン完済時(相続発生時ではない)
なお、これらの書類が送られてくるのは「住宅ローンの完済時」です。
相続発生時ではありません。
だいぶ昔にローン完済している場合には、家のどこかに関係書類があるはずです。
書類を紛失したときは、再発行してくれる!
・抵当権抹消登記が必要だなんて知らなかった..
・そんな昔に送られてきた銀行からの書類なんて無い..
という方は少なくありません。
でも、ご安心ください。
金融機関は「書類の再発行」をしてくれます。
(再度の書類発行手数料が発生しますが。)
そのため、現時点で書類が見当たらなくても抵当権抹消の手続きは可能です。
まとめ
ここまで、「抵当権抹消と相続登記の関係」についての解説いたしました。
ローンを完済している場合には、相続登記と併せて抵当権抹消も忘れないようにしてください。
・ローン完済しているときは、相続登記と併せて抵当権抹消が必要
・普通は、①相続登記→②抵当権抹消という順番
・相続発生前にローン完済している場合のみ、相続登記を経ずに抵当権抹消だけ先行することも可能