相続登記の必要書類(遺言書がある場合)
相続登記は事例に応じて「必要書類」が決まっています。
基本的な事例(相続人全員で遺産分割協議をする)のほかに様々な例外があり、「遺言書があるケース」もそのひとつです。
このページでは、相続登記の必要書類(遺言書あり)について解説いたします。
相続登記(遺言書あり)の必要書類1:遺言書
これは当たり前のことですが、遺言書がある場合には遺言書を使って相続登記を進めます。(遺産分割協議はしない)
遺言書(公正証書・自筆証書)の違いによって手続きが異なる!
遺言書には主に2つの種類があり大多数の遺言書は以下の形式で作成されています。
1.自筆証書遺言→手書きの遺言書のことです。
2.公正証書遺言→公証役場で公証人に作成してもらった遺言書。
発見された遺言書が上記のどちらに該当するかによって手続き方法が異なるため注意が必要です。
【見分け方は簡単です!】
公正証書遺言はこのように表紙に「公正証書遺言」と大きく書かれています。
逆にこのように「公正証書遺言」と書かれていないものに関しては、ほぼすべて「自筆証書遺言」です。
自筆証書遺言では家庭裁判所での検認が必要!
手書きの遺言書(自筆証書遺言)が見つかった場合、そのままでは相続登記に使用できません。
家庭裁判所での「遺言書の検認」が必要になります。
【遺言書の検認ってナニ??】
「遺言書の検認」とは、家庭裁判所にて相続人立会いのもと遺言書を開封し内容を確認する手続きです。
遺言書の内容が偽造・変造されないように証拠を保全する目的があります。
このように、手書きの遺言書(自筆証書遺言)がある場合には、相続登記をする前提として遺言書の検認が必要です。
検認を済ませ「検認済証明書が付いた遺言書」となって初めて相続登記に使用できる状態となります。
公正証書遺言は、そのまま使用可能!
公正証書遺言については「検認不要」です。
そのため、そのままの状態で相続登記に使用することが可能です。
【相続登記の必要書類:遺言書】
自筆証書遺言→家庭裁判所で検認した遺言書
公正証書遺言→そのままでOK!
相続登記(遺言書あり)の必要書類2:戸籍謄本・原戸籍・除籍
戸籍謄本等は遺言書の有無に関係なく常に必要書類となります。
ただ、事例に応じて必要となる戸籍謄本の量が異なります。
遺言書がある場合の相続登記では、通常の相続登記より必要な戸籍謄本の量が「少なく」なります。
以下、具体例にて解説いたします。
まず、遺言書がない一般的な事例で必要となる戸籍謄本の種類です。
配偶者と子が相続人になる場合【通常の相続登記】
1.被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 |
2.相続人(配偶者・子)の現在の戸籍謄本 |
遺言書がある場合については以下のようになります。
配偶者と子が相続人になる場合で
遺言書で全財産を子に相続させるという遺言書あり
1.被相続人の死亡記載のある除籍謄本 |
2.受遺者(子)の現在の戸籍謄本 |
通常の場合と異なる点として
・故人の戸籍について「出生まで遡る必要なし」
・遺産を受け取る人の戸籍謄本のみでOK(相続人全員分はいらない)
が挙げられます。
もうひとつ具体例にて解説いたします。
兄弟姉妹が相続人になる場合【通常の相続登記】
被相続人に子供(孫)がいない、両親が既に他界している場合には、「故人の兄弟姉妹」が相続権を持つことになります。
【被相続人に子供がいない場合】
1.被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 |
2.両親の出生から死亡までの戸籍謄本 |
3.相続人(兄弟姉妹)の現在の戸籍謄本 |
遺言書がある場合については以下のようになります。
兄弟姉妹が相続人になる場合で
遺言書で全財産を妹(次女)に相続させるという遺言書あり
【被相続人に子供がいない場合】
1.被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 |
2.両親の死亡記載のある除籍謄本 |
3.受遺者(次女:妹)の現在の戸籍謄本 |
となります。
なお、ここまで説明した
1.遺言書
2.戸籍謄本
が特に注意が必要な相続登記(遺言書あり)の必要書類となります。
相続登記(遺言書あり)の必要書類3・4・5:一気にまとめて紹介。
・被相続人の住民票の除票(戸籍の附票)
・不動産を相続する方の住民票
・固定資産評価証明書
これらについても相続登記の必要書類となります。
(通常の相続登記と同じですので、詳しい説明は省略します。)
詳細はこちらで解説しています。
【相続登記の必要書類・集め方(一般的なパターン)】
遺言書がある相続登記では不要になる書類:印鑑証明書
遺言書のある相続登記では通常よりも必要書類が少なくなることを先ほど説明いたしました。
なかでも「印鑑証明書」が不要となります。
印鑑証明書は通常の「相続人全員で話し合いをして相続方法を決める」という場合には必要書類でした。
それは、「遺産分割協議書」という書類を作成し「相続人全員が実印で押印」することが求められていたからです。
遺言書がある場合には「遺産分割協議書」は作成せず、遺言書を使って相続登記を申請します。
その結果「実印を押す書類」が無くなりますので、印鑑証明書は不要になります。
まとめ
ここまで、「遺言書がある場合の相続登記の必要書類」について解説してきました。
このページの内容をご理解いただき、今後の相続登記にお役立てください。
少し長くなりましたので、最後に要点をまとめます。
【遺言書がある場合の相続登記:必要書類】
・遺言書
→自筆証書遺言は事前に検認が必要。
→公正証書遺言はそのまま使用可能。
・戸籍謄本
・住民票の除票(戸籍の附票)
・相続する人の住民票
・固定資産評価証明書