推定相続人に具体的権利はあるか?

遺産相続において「推定相続人」という言葉があります。

推定相続人とは、

・いま現在生きている人物が、急に死亡したと仮定して
・現時点で相続人に該当する人(推定される人)

のことを指し、相続発生前(対象の方が存命時)に使われる言葉です。

はたして、推定相続人は生前から何か具体的な権利を持つのでしょうか?

このページでは「推定相続人に具体的権利があるのか」について解説いたします。

推定相続人には具体的権利は無し!

まず、結論からお伝えいたします。
推定相続人の段階では、一切の具体的権利はありません

自分が推定相続人に該当するからといって、権利主張をすることはできないのです。(認められない)

権利は「相続発生時」に確定する

実際に「相続対象者」が死亡すると、故人の一切の権利義務が相続人に承継されます。

逆を言えば、相続発生時(死亡時)までは、一切の権利承継は発生しないのです。

相続発生により、

・推定相続人→相続人

となります。(推定が外れる。権利が確定する。)

では、具体的権利がないとはどういうことなのでしょうか?
以下、簡単な具体例にて解説いたします。

具体例:推定相続人に具体的権利なし

【基本事例】
親:Aさん
息子:Bさん

現時点でAが急死した場合、Bは相続人となります。
したがって、現時点でBは推定相続人の身分を持っている。

このような事例を想定してください。

Aさんが自分名義の土地を第三者に売ってしまった!

あるとき、親Aが自己の不動産を第三者に売却・所有権移転登記をしてしましました。

さて、Bさんは困りました。そして怒りました。

「将来、私が取得するはずの不動産を処分して!!」

息子Bさんの主張

すると、息子Bさんから

「AからC(買主の第三者)への売却は、自分に相続させないようにするための虚偽売買だ。無効!」
「所有権移転登記を抹消しろ!」

という主張がされました。

果たして、この結果はどのようになったのでしょうか?

結果=B(推定相続人)の主張は認められず..

かつて、このような裁判がありました。
そのときの最高裁判例の要旨は以下のとおりです。

・推定相続人の段階では、期待権を持っているに過ぎない
・推定相続人の段階では、個々の財産について権利を有していない

要するに、推定相続人である息子Bさんの主張は認められなかったのです。

推定相続人の権利は「期待権」にすぎない

最高裁判例で、推定相続人が持つのは「期待権」にすぎないという判断がされました。

期待権とは「将来相続権を取得できるかもしれない」という期待・希望のことです。

期待権とは「法律上保護されるような具体的権利」ではないのです。(真逆)

したがって、期待権しか持たない推定相続人の主張は認められませんでした。

生前の段階では、財産の処分・保全は本人に権利がある

被相続人(相続対象者)が存命の間は、当然ですが全ての権利は本人に属します。

そのため、

・生前に資産を売却
・財産保全のために被相続人に代わって請求

といったことは、推定相続人レベルではできないということです。

まとめ

ここまで「推定相続人の生前の具体的権利の有無」について解説いたしました。

推定相続人レベルでは具体的な権利は何もないということを覚えていただき、今後の遺産相続にお役立てください。

・推定相続人には具体的権利なし
・持っているのは「期待権」のみ
・期待権は、法律上保護されるような具体的な権利ではない


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