相続登記をしていなくても所有権はある?
故人名義の不動産がある場合には相続登記が必要です。
(相続登記とは不動産所有者を「故人→相続人」に変更する手続き)
では、相続登記をしないと所有権の承継はされないのでしょうか?
それとも、相続登記は単なる事務手続きに過ぎないのでしょうか?
このページでは「相続登記をしなくても所有権はあるのか」について解説いたします。
相続登記について
まず「相続登記」について簡単に説明いたします。
不動産登記簿には、「所有者の住所・氏名」が記載されています。
この登記上に記載されている人物が所有者です。
所有者が死亡した場合でも、自動的に所有者変更はされません。
相続人自身の登記申請が必要となるのです。
「故人」→「相続人」への所有者名義変更手続きを相続登記といいます。
相続登記により新たな所有者が登記簿に記載される
相続登記を行うことにより、あらたな所有者が登記簿上に反映されます。
新所有者の住所氏名が登記上に記載され、翌年以降は固定資産税の通知が登記上所有者宛に送られるようになります。
現行の制度では「登記申請」は義務でない
先ほど「相続登記は自動的に行われない・相続人の申請が必要」と説明いたしました。
では、相続登記に期限はあるのでしょうか?
答えは「NO」です。
現行の制度では、○カ月以内に相続登記をしてくださいという期限は設定されておりません。
また、相続登記申請自体も相続人の任意意思に任されています。(強制・義務ではない)
したがって、登記を長い間していないという方もいらっしゃるのです。
登記をしないと所有権移転がしない??
相続登記をしないままの状態ですと、登記上の所有者はずっと「死亡した故人のまま」となっています。
固定資産税の支払通知書の宛名も故人のままという状態です。
では、このような状態では所有権は故人に帰属したままなのでしょうか?
相続人は登記をしない限り、所有権を取得していないのでしょうか?
相続登記をしなくても所有権は移転している!
さて、このページの本題です。
結論から申し上げますと、相続登記申請をしていない状態でも不動産の所有権は移転しています。
簡単に言えば、登記申請は単なる事務手続きなのです。
登記は報告手続き(権利発生要件ではない)
相続登記は「死亡により所有者に変更があった旨の報告」の手続きです。
1.相続により権利移転が既に発生
↓
2.その旨を法務局に相続登記申請をする
という順番です。
登記申請の中には「登記申請をすることが効力発生要件」というものも存在します。
しかし、相続登記はそうではありません。
登記申請と所有権移転は別物とお考えください。
死亡した時点で権利承継が発生
では、どのタイミングで故人→相続人に権利承継が起こるのでしょうか?
それは「死亡時点」です。
相続の発生により、故人に属する一切の権利義務が相続人に承継されます。
故人が所有者というわけではない!
相続発生後に早めに相続登記を行う方は大半です。
ただし、上記説明のとおり現行の制度では相続登記は義務化されていません。
したがって、長年登記上所有者が故人のままというケースも稀にあります。
しかし、この場合でも所有権が故人にあるとは言えません。
死亡している人物は権利義務の主体とはなれません。(死亡者が所有権者になれない)
登記上所有者:実態所有者が異なることになる
登記申請をしていない間は、
・登記簿上に反映されている所有者
・実際に所有権を有している人物
が異なることになります。
このような現象を解消するために、なるべく早めに相続登記を済ませてください。
まとめ
ここまで「相続登記申請をしないと所有権は移転しないのか?」について解説いたしました。
死亡時点で所有権が移転する旨を覚えていただき、今後の相続登記にお役立てください。
・死亡により所有権は移転する
・相続登記をしていない間でも所有権はある(公示できていないが)