遺言書は代襲相続される?
遺言書の効力発生時点は「遺言者の死亡時」です。
遺言書は元気なうちに書いておくことが通常です。
そのため、遺言書を作成した後、効力発生までの間には様々な事情が起こります。
「遺産を相続させようとした人が遺言者より先に死亡する」というケースも当然考えられることです。
この場合、遺言書の効力はどうなるのでしょうか?
遺言書は代襲相続されるのでしょうか?
このページでは「遺言書は代襲相続の対象となるのか」について解説いたします。
代襲相続とは?
まず、前提知識として代襲相続について解説いたします。
代襲相続とは、
・故人の死亡以前に相続人が死亡した場合
・相続人の相続人が相続権を取得する
という制度です。
代襲相続の具体例
上記説明では分かりづらいと思いますので、具体例をもとに解説いたします。
【基本事例】
故人:祖父A
Aの息子であるBは、Aより先に死亡している
Bには子(Aの孫)Cがいる
という事例を想定してください。
祖父Aが死亡する前に息子Bが死亡しています。
この場合、祖父Aの遺産相続に関して息子C(Aの孫)が相続する。
これを、代襲相続といいます。
遺言書と代襲相続(原則)
さて、このページの本題です。
具体例をもとに遺言書と代襲相続の関係について解説いたします。
【基本事例】
・遺言書を書いた人A
・遺言書により相続するはずだったが、Aより先に死亡したB
・Bの子供であるC
という事例を想定してください。
遺言書は代襲相続されない(失効する)
上記例では、遺言者Aより相続人Bの方が先に死亡しています。
そのため、Bは遺言により相続を受ける権利がありません。(既に死亡しているため)
この場合、Aの遺言書の内容は代襲相続され、孫のCが相続する権利を持つのでしょうか?
答えは「No」です。
遺言書の内容は代襲相続されません。
遺言書は失効する
遺言者死亡時において相続人(受遺者)は存命である必要があります。
したがって、遺言書を書いた人が死亡したとき(遺言書の効力発生時)にBが生存していなければ遺言書は失効します。
また、遺言書の内容は代襲相続されません。
したがって、遺言書によりCが代襲相続することもありません。
・遺言書は代襲相続されない
・遺言書は失効する
ということを原則論として覚えておいてください。
遺言書と代襲相続(例外)
上記で説明したとおり、遺言書の代襲相続は原則ありません。
しかし、遺言書作成後に相続人が死亡したとしても、遺言書が失効しない例外(代襲相続されるケース)もございます。
以下、例外事項について詳しく解説いたします。
予備的遺言あり:代襲相続される
例外的に遺言書が代襲相続されることがあります。
それは「予備的遺言」を残していた場合です。
予備的遺言とは下記のような記載の遺言書のことです。
「私は全財産を子Bに相続させる。万が一Bが私より先に死亡した場合は、全財産を孫のCに相続させる」
予備的遺言あり:遺言書は失効しない
このような代襲相続に関する記載がある遺言書がある場合には、対象の相続人が死亡しているときでも遺言書は失効しません。
Bが先に死亡していることにより、Cへ遺産を相続させるという遺言書になっているからです。
「万が一に備えた記載(=予備的遺言)の記載があるときのみ遺言書は代襲相続される」と覚えておいてください。
まとめ
ここまで「遺言書と代襲相続の関係」についての解説いたしました。
原則は代襲相続されないということを覚えていただき、今後の遺産相続にお役立てください。
・遺言書の内容は代襲相続されない(原則)
・遺言書は失効する(原則)
・例外的に遺言書の内容が代襲相続されることがある(例外)
・遺言書の代襲相続をさせるためには「予備的遺言」の記載が必要
・予備的遺言あり=遺言書は失効しない