遺言書が複数あるときは?
故人の遺品整理をしていると遺言書が発見されることがあります。
遺言書が1通のみであればそれに従えば良いのですが、問題は「遺言書が複数発見された場合」です。
遺言書が複数あるときは、どのように取り扱えばよいのでしょうか?
このページでは、遺言書が複数ある場合について解説いたします。
複数の遺言書:日付の確認
遺言書が複数ある場合には、まず「遺言書の日付」に注目してください。
遺言書は亡くなった方の最後のメッセージです。
ただ、遺言書を作成したあとに気が変わって新しく遺言書を作り直すことも考えられます。
最新の日付のものが有効となる!
複数の遺言書は、日付が一番新しい遺言書が有効になります。
以下、簡単な具体例をもとに解説いたします。
【遺言書が複数あるときの具体例】
・「甲土地をAに相続させる」(2015年の遺言書)
・「甲土地をBに相続させる」(2018年の遺言書)
このようなケースを想定してください。
複数の遺言書がある場合、後に書かれた遺言書(2018年の遺言書)の方が有効となります。
結果、甲土地はBが相続します。
複数の遺言書:内容の確認
先ほど、遺言書は最新のものが有効であるという説明をしました。
ただ、これは「複数の遺言書の内容が重複する場合」の取扱いです。
遺言書の内容が重複していなければ「古い遺言書も有効」です。
(内容が矛盾していなければ、複数の遺言書は両方有効ということです。)
こちらについても、簡単な具体例をもとに説明いたします。
遺言書が複数あるときの具体例1
・「甲土地をAに相続させる」(2015年の遺言書)
・「甲土地をBに相続させる」(2018年の遺言書)
という2つの遺言書がある場合を想定してください。
この2つの遺言書は内容が重複しています。
このような複数の遺言書がある場合、後に書かれた「Bに相続させる」という遺言書のみ有効となります。
遺言書が複数ある場合の具体例2
・「甲土地をAに相続させる」(2015年の遺言書)
・「乙土地をBに相続させる」(2018年の遺言書)
次に、上記のような2つの遺言書がある場合を想定してください。
この2つの遺言書は内容が重複していません。(互いに矛盾していません)
そのため、両方の遺言書が有効となります。
結果として、「甲土地はAが相続」・「乙土地はBが相続」となります。
遺言書が複数あるときの具体例3
・「全財産をAに相続させる」(2015年の遺言書)
・「乙土地をBに相続させる」(2018年の遺言書)
上記のような2つの遺言書がある場合を想定してください。
このような複数の遺言書が出てきた場合はどうなるのでしょうか?
上記の複数の遺言書は「重複している部分」と「重複していない部分」があります。
したがって、両方の遺言書とも有効です。
重複しているところ(乙土地)については最新の遺言書が有効となります。
結果、乙土地についてはBが相続をします。
重複していないところ(乙土地以外の財産)については古い遺言書も有効です。
乙土地以外の財産はAが相続するという結論になります。
公正証書遺言と自筆証書遺言があるとき
最後に「公正証書遺言・自筆証書遺言」の両方が存在する場合について解説いたします。
遺言書には主に2種類あります。
公正証書遺言とは「公証人に作成してもらう遺言書」のことです。
自筆証書遺言とは「手書きの遺言書」のことです。
イメージとして公正証書遺言の方が強力であるような印象を受けますが、公正証書遺言・自筆証書遺言の効力は同じです。
「公正証書遺言の方が自筆証書遺言より強い」ということはありません。
ですので、複数の遺言書があるときは最新の遺言書が有効となります。
遺言書の内容が重複しない部分では古い遺言書も有効になります。
まとめ
ここまで遺言書が複数ある場合についての解説いたしました。
日付・内容に注目することを覚えていただき、今後の相続手続きにお役立てください。
・遺言書が複数ある場合、最新の日付の遺言書が有効
・複数の遺言書の内容が接触しない=両方の遺言書が有効
・複数の遺言書があり、一部内容が接触する
=接触する箇所は最新の遺言書が有効
=接触しない箇所は古い遺言書も有効